Shining Star



東の空が白々と明るくなってきたころ。
ようやく居間を片づけ終えたアーチャーは、凛が眠るベッドの脇に静かに佇んでいた。
凛はアーチャーがそこにいることに気づく様子もなく、規則正しい寝息を立てている。
つい先程サーヴァントを召還したばかりで魔力を使い果たしてしまったのだろう。おそらくこのまま朝まで目を覚ますことはなさそうだった。

安らかな表情で眠る凛の顔を見つめながらアーチャーは小さく息をついた。

(これが今回のマスター・・・・か)

今回はまたとんでもないマスターに引き当てられたものだと思う。
魔力は申し分ないが、些細なことで令呪を使用したりアーチャーへの最初の命令が『居間を掃除しろ』(これに対しては大変根に持っている)だったりと性格には少々、いやかなり難ありといってもいいだろう。
それに何より、契約に最も大切な名を告げるというステップを忘れてしまっているのだから魔術師として問題だと思わざるを得ない。
本当にしっかりしているようで間の抜けた世話の焼けるマスターである。

けれど。

アーチャーは自分を引き当てたのがこのマスターでよかった、と感じていた。
その理由は彼女自身が持つ、魂の輝きのせいだ。
人には希有な燃え上がる強い輝き。
そしてどこか懐かしい・・・・
記憶が曖昧なので確信はないけれど、もしかしたらどこかで見たことがあるのかもしれない。
この輝きはどんなことがあろうともたとえ次元を隔ててもきっと損なわれることのないものだから。
何光年離れていても輝きを伝える星のように。
彼女を見ているとわき上がってくる予感が心をかすめる。


待ち望んでいた時がやっと訪れた。

彼女とならばやれる。

今度こそ己の望みを叶えることができる。


心が高揚し、唇が笑みを刻む。
そのとき、わずかに声を出してしまったためか眠るマスターが小さく身じろぎした。
「ん・・・」
(おっと)
幸い目を覚ますことはなかったが、どうやらこのへんが潮時のようだ。
気づかれたら最悪の事態になりかねない。


とりあえず、彼女が目を覚ましたら何よりも先に彼女の名を聞かなければ。
そう決意してアーチャーはマスターの部屋から去った。



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